収穫をテーマにスナップを撮ろうと脊振方面へ出かけた。
幹線の21号から富士町に向かう209号線に入ると、まもなくたくさんの彼岸花が目に入り、慌てて車を止める。
柿の木が植えられた大きな法面いっぱいに広がる彼岸花。
ピークは過ぎたがまだまだ美しい。
撮影中ふと稲刈を終えた田んぼと干してある藁の束に気がついた。
興味をそそられ撮影していると持ち主の方々が来られ、丁度これから隣の稲刈だというお話。
思わず申し込み、稲刈りの様子を撮影をさせて頂けることになった。
ちなみに干してあった稲藁は、神社のしめ縄用に粉砕せずに残したものだという。
各戸持ち回りで対応しているのだそうだ。
伝統はこうやって成り立っているのだ。
今日は棚田の一番下から始めて、順に3枚分の稲刈を行うということである。
品種は佐賀県の新品種で、昨年から栽培を始め今年で2年目。
台風に強くするため丈を抑える改良がされているのだそうだ。
農業は自然との戦いなのだ。
コンバインは畦道から田んぼに入るのだが、前後に細かく位置を変えながら方向を探り、入り口付近の稲を捌きつつ、非常に慎重に田んぼに侵入する。
見た目にも熟練を要する作業で、運転者とサポーターによる息のあった作業である。
横から見ていると色づいた稲穂が波のようで、金色の海原に船で乗り入れる漁師のようにも見えた。
稲刈は、外周から円を描きながら中心へと進む。
木々の深い緑に点在する彼岸花が美しく、逆光気味に金色に光る稲穂がとても印象的である。
静かな山あいでコンバインが効率的に稲を刈る。
コンバインが刈り残した稲は人が拾いながら、コンバインと人は機能的に動く。
動きにリズムがあり一つの演劇を見ているようで見飽きることがない。
正味30分ほどで稲刈は終わった。
最後に脱穀された籾がホースを伝って袋に回収される。
稲刈・脱穀・稲藁の粉砕・籾の選別と回収。
ここまでが一連の流れだ。
コンバインも改良が進み、倒れた稲や田んぼの角の処理も随分早くなったのだそう。
「棚田は大変ですね」と声をかけると「まずは道づくりからですからね」と返事。
確かに農業機械が入る道がなければ、中山間でのコメ作りなど出来ないだろう。
実に大変な作業だ。
お礼を述べて棚田を離れる。
車に戻りながらもう一度彼岸花を撮る。
棚田には、これから稲刈を待つ稲穂が光っていて、とても綺麗だった。
この風景は、人と自然が作るものなんだと改めて思った。
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