佐賀県みやき町の自宅から東脊振トンネルを抜けて福岡市西区にある会社に片道45キロほどの道のりを通勤している。
東脊振トンネルは背振山地の東端にあり、佐賀側からトンネルを抜けた先がすぐに五ケ山ダムで、ダムを下る道路から見下ろせる距離で連続して南畑ダムが現れる。
南畑ダムの堰堤を過ぎると道は急な下り坂となり、筑紫耶馬渓の連続カーブを抜けて那珂川市の平野部に降り、その後早良区を経て西区の会社に向かう。
毎日大変ですねと言われるが、私には季節楽しむドライブコースで、飽きたことは無い。
通勤の風景は季節ごとにいろいろな姿を見せてくれるが、5月から6月にかけては、マタタビの葉が白く変化して初夏の始まりを教えてくれる。
道沿いの緑が白い斑点を身にまとう姿は、大好きな変化の一つだ。
マタタビは、湿気のある渓流沿いにみられるつる性の植物(キウイも仲間らしい)で、その葉は、花の時期に白化をするという不思議な習性がある。
白くならなければ、よほどのマタタビ通でなければ、山を見てあそこにマタタビが生えているなんてわからないだろう。
マタタビの葉が白くなるのは、果実に虫が卵を産み付けたサインで(卵を産み付けられた実は、どんぐりのような形からこぶで膨れたような形に代わる)、以前はよく白くなった葉を目印に、「虫こぶ」になった実を取りに行っていた。 乾燥させてから焼酎につけて「マタタビ酒」を作るのだ。 「虫こぶ」になった実を乾燥させたものは、「木天蓼(もくてんりょう)」という漢方薬として売られていて、疲労回復が効能である。
ところが「虫こぶが出来るから葉が白くなる」と言うのは私の勝手な思い込みで、真実は違うという事を最新知った。マタタビの白化現象について、秋田県立秋田中央高校の高校生のレポートが公開されていてる。
「マタタビの白化現象の謎にせまる」という表題で、とても本格的な研究レポートで興味深く読ませてもらった。
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/http://sec-db.cf.ocha.ac.jp/pdf/59_seikagaku_HB13.pdf
特に白化が色素によるものではないというのには驚いた。
白化部分の表皮細胞が三角錐のような形をしていて、不規則に並ぶため、光を乱反射させやすく我々には白く見えるだけで、しかも白化部分の葉緑素は、緑葉よりも多いのだという。
またつぼみが多くついた枝に白化が起き、昆虫を誘因することを目的としている事などとても丁寧にいろいろな角度から実験と考察がなされていて感心した。
化学的なアプローチは、絵画や写真とはまた違っているが、自然に対する気付きや、現象をもっと知りたいという気持ちには共通項がある。
特に写実画の場合、描く対象の成り立ちを化学的に分析し、そこから精神的な世界を模索する作品は多い。
自然の不思議が、とても身近なところで繰り広げられている事に改めて気付かされ、とても新鮮な気持ちになれた。
まったく、自然は面白い。
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