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  • 執筆者の写真英雄 黒木

森の写真

更新日:2023年8月5日

初めて写真で作品作りをしたのは、2022年Wald Art Studioの「Abouty30 Vol.2」に出品した「ある森の物語」という作品である。

「30号程度で2枚組の作品」という企画で、「旅の初め」「墓標」という2枚の写真を1つの額に収めた1,000mm×1,930mmの比較的大きな作品だった。

この作品以降、撮影をした森をフィールドに作品作りをしているが、当時写真の加工がどこまで許されるのかと悩んで、イメージラボのフォーラムで相談したことを覚えている。


作品作りに使用する主なソフトは、「LightroomCC(Adobe)」「PhotoLab(DXO)」「NikCollection(DXO)」で、基本的なワークフローは次のような流れ。


①現像工程

撮影→LightroomCCに取り込み(RAWデータ)→PhotoLabへエクスポートしてRaw現像→LightroomCCにエクスポートして保存(TIFフォーマット)。

②レタッチ工程

LightroomCCのTIFデータをプラグインからNik Collection(Silver Efex Pro)で開き画像を編集→LightroomCCに保存。


LightroomCCは主にカタログソフトとして使用しており、加工段階の写真が何枚も出来るのでファイル名やレーティングで管理している。


最初の作品作りの時、現場に何回も通い再撮影を行ったことや、手探りでワークフローを何度も変えながらテストプリントを行い、何か月かかけてやっと仕上げた事を思い出す。

今のワークフローは試行錯誤を経て、なんとなく固まってきた流れである。


①現像工程

PhotoLabを使用するのは、Rawデータの現像処理が優れているのが理由である。

最初、デジタルデータの現像と聞いてもピンと来ず、フイルム現像のイメージしか想像できず、ずいぶん違和感を持っていた。それはおそらくデジタルカメラでシャッターを切ればすぐに極彩色のカラー画像ができるので、勝手に現像が必要ない(現像工程が存在しない)と思っていたからで、実はカメラの内部処理で現像処理されている(イメージセンサーで受け取った光情報をRGB情報に変換している)と知ったのは、Rawデータから作品作りを行うようになってからである。


そもそもカラー画像を作り出すにはRGBという3原色が必要だが、我々が使用しているデジタルカメラのほとんどは、レンズから受けた光を1枚のイメージセンサーで受け取る単板式で、イメージセンサーを構成する画像素子の一つ一つには、一つの色フィルターしか持つことが出来ないことから、3原色の各色はモザイク状に取得される。

そのため欠損した画素値を補完する必要がある。

この補完方法がデモザイク処理という代表的な現像技術であり、PhotoLabはそのデモザイク技術(再現性)に優れているソフトである。

その他、「光学的に発生する 4 種類の問題、ディストーション、ヴィネット、色収差 (縦横それぞれ)、レンズブラーを自動的に補正。 自社ラボにおいて、長年にわたり様々なカメラとレンズの光学的欠点に関するテストを行い、収集したデータベースを蓄積しており、補正にはこのデータベースが使用(マニュアルより編集)」されていて、経験と実績に伴うブラックボックス的なノウハウがソフトに詰まっている。

(引用:カラーデモザイキング処理の概念図=ディジタル画像処理改訂第2版(CG-ARTS)より)


作品作りの考え方としては、撮影したRawデータをPhotoLabで現像処理をすることで、撮影画像が持つ情報をベストパフォーマンスが出せる状態(レンジ幅が広く色深度に優れている)に仕上げ、次の工程(レタッチ)に引き渡すという意味になる。加工したRawデータはTIFフォーマットで保存する。


②レタッチ工程

LightroomCCのTIFデータをSilver Efex Proで開くと、モノクロ画像として表示される。(モノクロ変換で色情報を破棄したのではなく、色情報を持ちながらモノクロで表示しているので、カラーフィルターを適用し青空を黒くする処理もできる)

初期の調整には、ソフトに用意されているプリセットを利用する。

その後、作品の主題を意識しながら画像の持つ潜在力を引き出すイメージで細部の表現を調整、部分的なカラー情報の回復は、コントロールポイントで行う。


Silver Efex ProのコントロールポイントがLightroomCCのマスクやフィルターと異なるのは、細密なポイント指定と、選択範囲内の類似した特性だけを調整出来る点だと思う。



LightroomCCでマスク処理する場合、面としての調整を行うイメージだが、Silver Efex Pro のコントロールポイントは、画像の特定部分を細密に指定出来るので、部分的にカラーを回復する際に微細な色(箇所)を指定しても、選択範囲内の類似した特性の色(箇所)だけを画素レベルに近いイメージで同様に回復してくれる。


これは絵画を描くように微細な調整が出来る点で、高い表現力への可能性を秘めている。

モノクロから彩色して仕上げる手法は絵画にもあって「グリザイユ技法」という。

絵画の場合は色を重ねる事により深みを出したり、絵具層の厚さや被覆の違いにより物質感を表現する。また下色を透過して上色を際立たせたりもする。

色を回復させながらイメージに近づけていく作業は、その感覚によく似ている。



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今の創作は、1つの森をフィールドにしている点で素材そのものに制限がある。

そこで、時間、光、風といった自然現象を利用したり、或いはライティングなどで効果を作り出しながら試行錯誤をしなければならない。

BS1スペシャル「黒澤明の映画はこう作られた」という番組で紹介された黒澤監督の言葉が心に残っている。「とにかく編集のための材料を撮っておくんだ。」「私は編集の材料を集積するためにフィルムを沢山使う。編集は私がやる」

映像で雨が目立たないから、墨汁を混ぜた雨を降らせた話は有名である。


撮影したいイメージを絵コンテとして描き、自然を駆使した効果を作り出す撮影を試行し、その上で編集にこだわるプロセスが完成度の高い作品につながる。

そんなことを考えながら、もう少し今のテーマに取り組んでみようと考えている。

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